★山口伊久子 / 『マインドフルネス瞑想・ヨガ』
●ふたつのこころのモード
(1)することモード(doing mode)
別名「駆り立てられるモード」
物事が望ましい状態ではない
(現在の状態=現状と自分の理想の状態に不一致がある)と、
こころが判断した時に引き起こされ、ふたつのことを行います。
ひとつはネガティブな感情を自動的に引き起こすこと、
もうひとつが、現在の状態と望ましいと思う状態との
ギャップを埋めようとする、習慣的なこころの働きが起こることです。
うまくいかないと不一致を埋めようと、
ぐるぐると考え続けたり、過去に起きたことをくよくよ考えたり、
未来を心配したりするようになります。
さらに、嫌な気分に気づき気分を良くしたいと思うと、
そこにある現状との不一致に気づき、さらにその感情を強めることになる。
(2)あることモード(being mode)
状況を変えようとするのではなく、あるがままを「受容」して、
そのままに「させておく」モードです。
「することモード」が過去や未来について考えるモードであるのに対し、
「あることモード」は「今、この瞬間の体験にある」モードです。
「あることモード」ならば
「やること」や「すること」にとらわれるのではなく、
自分が今と繋がっていて、
ここで起きていることに気づくことができるのです。
そして、そのままにさせておくことで、
こころのなかで起こる嫌な感情は、
「ただ過ぎ去る出来事」として消えていきます。
私たちは、嫌なことが起こると
自動的に「することモード」にこころがシフトします。
そして、その時に役に立つのがマインドフルネス瞑想なのです。
マインドフルネス瞑想は実践のなかで、
「することモード」にいる自分に気づき、
「あることモード」へと意識的に移すことをトレーニングしていきます。
●私たちは常に「こうあるべき自分」「こうありたい自分」に
今の自分を重ね合わせています。
そして、「こうあるべき自分」や「こうありたい自分」と
今の自分を「比べながら」自分自身を観ていることがよくあります。
いっぽう、他社のことは冷静に、ありのままに観ることができるものです。
同じことが自分の身に起こると、
「そんなことを言っても、気になってしょうがない」
「ああだったら良かった」という思いを背負い、
そのフィルターで物事を観てしまう−それが私たちなのです。
私たちは自分のことになると、
「ありのままの現状を観ること」を飛び越えて理想の自分と比較したり、
結果から逆算して、最初から到達できない結果を嘆いたり、
そうならない自分を批判したりしているのです。
マインドフルネス瞑想は、この「ありのままの自分」を
ただ観察することから始めます。
●座り方、手の置き方
・安楽座(あんらくざ)
両足のかかとが、からだの中心で前後に並ぶようにします。
・結跏趺坐(けっかふざ)
右足を左の腿の上に深く載せ、左足を右の腿の上に載せます。
・半跏趺坐(はんかふざ)
右の足を左の腿の下に深く入れ、左の足を右の腿の上に載せます。
・ヨガのチンムドラー
人差し指と親指の先をつけ(印を結び)、ほかの指は伸ばします。
・坐禅での法界定印(ほっかいじょういん)
右手を左の足の上に置き、その上に左の手をのせて両手の親指をあわせます。
●飲む瞑想
・(器に対し)指先から伝わる感覚に意識を向けてみましょう。
↓
手のひらからからだに伝わる感覚に意識を向けてみましょう。
↓
五感や五感を超えた感覚で味わってみましょう。
●マインドフルネス・セルフボディタッチ
膝を立てた状態(体育座り)で、
手でからだの部位を触って(たっち)いきます。
そして、指先や手のひらから伝わる感覚に意識を向けて観察していきます。
実際に触ったところや、
指や手のひらの感覚に意識を向けるほうがわかりやすい。
・心理療法で行われるマインドフルネスのエクササイズのなかで、
ボディスキャンというエクササイズがあります。
●マインドフルネスヨガ(動作瞑想)
ゆるやかな動きのなかで起こるからだやこころの変化に意識を向けて、
ただ、そこで起こっていることに気づいていくという動作瞑想です。
●朝のマインドフルネス瞑想(抜粋)
・安楽座でも椅子に座っても。
・目を閉じて、呼吸に意識を向けていきましょう。
↓
まわりの音が気になったり雑念や不快な気持ちなど、
呼吸から離れてこころがさまよいだしたら、
その置きていることに意識を向けて、
そしてゆっくり呼吸に戻ってきます。何度でも、何度でも。
↓
さらに、その呼吸と繋がるように動く、
からだの変化に意識を向けていきましょう。
今、ここで起きていること、自分の存在を感じています。
今、この瞬間に起こっていることすべてを受けとめてここにいます。
●職場でのマインドフルネス・エクササイズ
仕事をしていると、
誰にでも自分の思い通りに物事が進まないことがあります。
その都度、イライラしたり、事実を超えて妄想を膨らませて
(たとえば、勝手に自分で作り出したストーリーで)落ち込んだり、
相手を非難したりすると、ますますストレスをため込んでしまいます。
このエクササイズを行うことは、”今、ここ”に意識を向け、
イライラしたり落ち込んでいる自分の状態を、
客観的に観ることにつながります。
そして勝手に思い込んでいる自分に気づいていき、
見失っている自分を取り戻していきます。
ポイントは、慈しみのこころをもって行うことです。
そうすれば、自分に対しても相手に対しても
怒りを感じたり批判的になることから離れて、
ただ今、この”事実”や、
やらなければいけない”業務”に向き合うことができるでしょう。
※慈しみ
下の者、弱い者にめぐみや心をかけ大切にすること。また、その心。
愛情をもってかわいがること。
<出典:https://dictionary.goo.ne.jp/thsrs/4040/meaning/m0u/>
・マグカップ瞑想
カップを持ちながら、今、この瞬間に起きている感覚に意識を向けています。
・からだを左右・前後に動かす
椅子に浅く座り、両腕の力を抜き、からだの重みだけでゆっくりと。
からだの重みを感じながら、ゆっくりと行いましょう。
・歯磨き瞑想
歯ブラシで歯を一本一本磨いていきます。
歯ブラシが歯に当たる感覚や手の動き、
そしてその時の呼吸にただそっと意識を向けていきます。
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